2007年1月 3日

群集心理を操るノウハウ

最近は1月2日が初売りという伝統が崩れ
元日営業を行う小売店も多くなったことから
多くの小売店が元日から福袋販売に精を出した今年の初売り商戦。

今年はそんな情勢のなかにあって敢えて2日から営業を開始した
北千住ルミネを初売り・初買いの舞台に選び
年に一度のお付き合いで朝からの行列に並んでみることにした。

今回は遠方のギャンブル客としては松戸競輪・取手競輪行きというイメージのある
常磐線に乗って現地へ向かったのだが
さすがにお正月の早朝から「競輪臭」のする客は電車には乗り込んでおらず
いつもと違ったイメージを持って現地へ。
改札を出るとまだ開店2時間前だというのに多くの人が行列を作っていた。

開店まで1時間を切った頃になると行列はかなり長くなり
並ぶ行列の中からは「寒い」「疲れた」「早く開けて欲しい」などといった
ワガママな要望まで飛び出すようになり
あたりには「競輪場」と似た雰囲気の空気が流れ出してきた。

すると、そのタイミングでルミネ側が
店内フロアガイドと共に配布しだしたのがこれ。

それは公営競技場で配られることの多い「使い捨てカイロ」であった。

公営競技場ではただの使い捨てカイロだけが配られるが
ここはさすが商売のプロ。
カイロの入った袋の裏にはルミネのキャラクター「ルミ姉」のイラストと共に
「寒い中、ご来店ありがとうございます」から始まり
「どうぞ楽しいお買い物を」に終わる粋な文章が添えられていた。

やがてようやく開店の時間となったのだが
客を迎えるお店としては最大の関門はこれから。

並んで入った客というのは
「せっかく並んだのに買えなかったら悔しい」との思いから
入店と同時に「開店ダッシュ」という極めて危険な行為をしがちになる。

私は冷静に前に並んだ客たちの動向を伺っていたのだが
ここでもやはり係員の制止を振り切って開店と同時にダッシュする者が相次いだ。
それを見た後方の客たちは前に並んだ客を押し込むように前進
悲鳴があがり前方集団は一瞬にしてちょっとしたパニック状態に陥って行った。

ここで店側はとっさに大きなジェスチャーと共に
混乱から来る焦りなどを微塵も感じさせぬさわやかな笑顔で呼びかけを行った。

そうしたところ、面白いことに騒ぎは一気に沈静化。
場の空気は一瞬にして違ったものに変わって行き
その後は混乱が起こることもなく順調に販売は遂行されて行ったのだった。

さすがは接客・販売のプロたる小売店。
群集心理と言うものをよく心得て対応にしていると言う事が
見ていてよく分かるような見事な群集の操縦ぶりであった。

先日の前橋競輪場での騒動でもそうだったが「人は決して強くない」もので
多くの人はなぜか回りの人の流れに同調してしまう性質を持っているものである。
こうしたバーゲンセールでさえも
「ひとりの人間が走り出せば皆が先を争って走り出す」
「それを見た列の後ろにいた人が焦って前に進むことにより列を前に押し出して混乱を招く」
こんな流れが思わぬトラブルを引き込むことがある。
ここでは販売のプロである小売店側がこうした事態を想定した対応を冷静に行ったことで
大きな混乱は見られなかったが、これが「客には者を配ることによって黙らせろ」と
客を物乞い扱いする思想しか持たない公営競技場で起こればどんなことになるか?
考えてみただけでも恐ろしくなる。

公営競技場の従業員と言うのは本来ならば小売店と一緒で
「販売・接客のプロフェッショナル」でなければならないはず。
しかし現状ではどうだろう?
車券購入を行った人間に対して「ありがとうございました」のひと言が言える
穴場のババアが果たして全国に何人いるというのだろうか?
客とすれ違いざまに挨拶のできる係員が全国にどれだけの数いるというのだろうか?

商人は基本的に「自分が生活できるのはお客様が品物を買ってくださるから」
と考えるのが普通だが公営競技場の従業員や一部の選手に言わせると
「金は国(または県・市などの胴元となる地方自治体)から出るから関係ねぇ」
ということになる。

ギャンブル場と小売店は違うと思う向きも多いかもしれないが
「客がお金を払って券を購入することによって初めて商売が成り立っている」ギャンブル場は
本質的に小売販売店となんら変わりがないはずなのだ。

小売店は「あたりまえのことをあたりまえにする」。
しかしギャンブル場は「あたりまえのことをあたりまえにできない」。

よくギャンブル場の客はガラが悪いと言われるが
冷静に考えてみればギャンブル場の従業員のガラが悪いのだから
客のガラがよくなるはずもない。ギャンブル場のガラの悪さというものは
ギャンブル場自らが作り出していると言っても過言ではないのだ。

私は競輪を生で観戦するのが大好きだが
家で競輪をテレビまたはネット観戦するのはそれ以上に大好きだ。
その理由は簡単。
客を客とも思わない競輪場の従業員に接して心が荒み、競輪を嫌いになりたくないから。

昨今の競輪界は売上が急落したことに焦りを感じて
ファンサービスだ何だとお仕着せがましくいらないものを配ったり
余計なイベントを開催して客寄せすることに躍起になっているが
そんなものが一体なんの役に立つというのか?

一番大切なことは何か?
公営競技場はもう一度考え直したほうがいいはずなのだが
親方日の丸で暮らしてきた人たちには恐らくそんなことを考えられるほどの頭もないのかもしれない。

今年もいくつかの公営競技場が廃止の憂き目に遭うことだろうが
そのほとんどが現状のままであれば「廃止を食い止めよう」と運動を起こすより
とっとと廃止してしまったほうがいいような場ばかりなのは気のせいだろうか?

新年早々、ギャンブル場とは全く関係のない「健全な場所」で
実に「不健全なギャンブル場」のことを考えたところ、こうした最も悪いところが気になった。
今年こそ公営競技場はこうした小売販売店を少しでも見習って
商売の本質というものを追求すべき時がきているのではないだろうか?