2007年12月19日

石橋を叩いて渡った…はずが…(伊東温泉競輪開設記念最終日)

伊東温泉競輪開設記念(G3)最終日順位決定戦B9レース。

このレースは峠祐介-岡田征陽-藤原憲征-森内章之とつけたラインと
石橋慎太郎-藤田和彦-豊田知之と並んだラインによる実質の2分戦。
浮き駒となった濱口高彰と工藤政志はそれぞれ前々・自在のコメントで単騎の競走。
メンバー構成上、両自力型と実力者・濱口高彰の動向に注目が集まる…そんなレースとなった。

レースは徹底先行・峠祐介が赤板で石橋慎太郎を抑えて先行態勢。
そこから石橋がジリジリと番手を下げて行き巻き返しのチャンスを伺っていると
石橋ラインの3番手につけた豊田知之はすかさず切り替えて内を通り抜けて峠の番手に追い上げる。

出切ってからペースを緩めて後続を牽制していた峠が左を振り返って一連の動きを確認していたその時
峠が見ていなかった右後ろの方向から、一気に緑の物体が駆け抜けて行った。

最初からそれを狙っていたのか?と思えてしまうような見事な工藤の鐘ガマシ。

峠がそれに気付いて慌てて踏み出した時には工藤ははるか前方をひとり旅。
峠以下の選手がそれを必死になって追いかけるが
先頭で工藤を追いかける峠のピッチが上がらないこともあってか、なかなかその差は縮まらない。

ラインも何も関係なく全選手が必死に前を追いかけて行く中
濱口高彰・石橋慎太郎らの実力者がようやく峠の山を乗り越えたのは4角を回り終える頃。
直線に向いてからも後続の選手は9秒台前半の脚を使って必死に追い込むが
絶妙のタイミングで決死のカマシに打って出た工藤政志を結局捕まえることができずに
結果は工藤の逃げ切り勝ち。

このレースに出走する選手の中で、ただひとり平均競走得点が100点を下回っていた工藤が勝ったことで
ヒモ(2着)が人気を集めた石橋だったにも関わらず
2車単は万車券、3連単配当は13万円を超える大穴高配当となった。

普通であれば工藤のアタマともなればもっと大きな配当になっても不思議はないのだろうが
このレースでは先行策をとることが確実視されていた峠の番手がヨコに不安のある岡田であったことや
流れによってはいざとなれば自力も出せる濱口の動きを利用することができるメンバー構成であったことなどから
工藤が思わぬ穴人気となっていたようだ。

33バンクは特にゴールまでの絶対的な距離が短いことから
自力屋が「まさかこいつが自力で仕掛けてくることはないだろう」とタカをくくっていたような選手が
まさかのカマシを打ってそのまま押し切ってしまうことがある。

この工藤政志は捲り主体の自在屋であるが、普段は自力を出すことのないマーク屋も
「決して自力を出す脚がないからという理由で人の後ろにつけている訳ではない」ということを
車券を買う側の人間は常に頭のどこかに置いた上で車券戦術を練らねばならない。

3日目の1レースで捲って勝った「マーク屋」の中曽直彦などのように
「期の終わりで失格をしたくないから自力を出しているだけ」(アカギより)と
いざとなれば平然と自力を出してくるマーク屋もたくさんいるだけに
特に現行の2層制度のように同級であっても実力の差が非常に大きい選手同士の対戦の場合は
マーク屋や浮きゴマとなった選手は「ただ単に人の後ろにくっついて走るだけ」と言った
勝手な先入観は最初から捨ててかかったほうがいいだろう。

このレースは工藤政志の賭けがピタリと嵌った好レースであったと同時に
峠の油断が招いた凡レースと見ることもできる。
せめて峠の番手を回った岡田が右後ろに注意を払っていれば大きな声で叫んで
峠に工藤が仕掛けてきたことを教えてあげることもできただろうに…。

場内ビジョンが用意されていない場では走っている選手が後続の選手の仕掛けを
場内ビジョンで確認しながら走ることができないために
特にこのようなレースは起こりやすいはず。

こうした「選手の決死の仕掛け」に賭けてみるのも競輪の楽しみ方のひとつ。
こんなのがピッタリ嵌って高配当を手にした暁には、それこそ一生その選手に足を向けて寝られなくなることだろう。

展開はひとつではなく無限大。
9人の人間がそれぞれの考えを元に走るバンク上には無限の可能性が広がっているのだ。