2008年2月19日

地域に生きる人々の生活の息づかいを感じた朝(門司・安全入船食堂)

2008年1月26日。
競輪祭観戦のために小倉へ向かったまではよかったが
この日は土曜日であるというのに事前に宿の予約などもしないままでの小倉入り。

仕方がないので競輪場に入る前に携帯電話から周辺の宿を検索してみたところ
近くの宿はどこも満杯で、出てきたのは遠く離れた京都郡苅田町(みやこぐん・かんだまち)にあるホテルだけだった。

市街地に宿を取れば夜の盛り場に繰り出していく楽しみもあるのだろうが
宿泊した苅田町のホテルは新北九州空港にほど近い場所にあったものの
周りはスカスカで何もないと言っても過言ではない場所に建つホテル。

わざわざ遠くまで出かけていくのは面倒だし
こんな日は部屋でのんびりと酒でも飲んで明日の朝までゆっくりと過ごそうと思い
開き直ってビールを飲みながら部屋のテーブルに並べられたパンフ・冊子類を眺めていると
そこに気になる冊子が置かれているのが目に付いた。

「めし大盛りにしとって!」
タイトルにそう書かれていたその冊子は北九州市が発行しているという情報誌「雲の上」。

重工業を中心として発展してきたこのエリアの「はたらく人たち」を長年に渡って支え続けてきた
古くからある大衆食堂を特集したこの冊子はドキュメントも写真も非常にインパクトがあるもので
ひとり酒を飲みながら、思わずその冊子に見入ってしまったほどであった。

誰もが行くような観光地をあまり好まず
地域に生きる人たちの生活の息づかいを感じることができるような場所に行くのが大好きな私にとって
そんな場所に興味が湧いて来ないはずもなく…
翌日の朝は競輪場に入る前にぜひここに掲載されている食堂に行って、せめてもの旅気分を味わってみることにしようと思い
この日は眠りに落ちることとしたのだった。

全線高速道路利用とは言え、群馬の前橋から北九州まで車を運転して来たのだから、当然疲れがないはずもなく
翌朝は予定よりも遅い目覚めとなってしまったのだが
外を見てみれば西日本特有の訪れの遅い朝のおかげでまだ周囲は真っ暗なまま。
ゆっくりと準備をしてチェックアウトしたのち、車を新北九州空港のほうに走らせると
眼前には地平・水平に浮かび上がる朝日が私を出迎えてくれた。

苅田(かんだ)から門司(もじ)へは高速道路もつながっていて、ひとっ飛びで行ける距離。
この日は日曜日の朝ということもあり、非常に交通量の少ない道を快適に進み
昔、競輪場のあった街・門司へ。


まずは海に面した岩場に立つ和布刈(めかり)神社に立ち寄ったのち
そこからほど近い場所にある「門司港レトロ」と名付けられた再開発地域へ。


ここは古くからある港の情景を生かしつつ再開発を施した場所で、今では地域有数の観光地になっているだけでなく
地域住民が散歩をしたり、ミニ朝市が行われたりと地域住民の生活に溶け込んだ場所となっているようだった。

レトロ地区を少しだけ外れると、そこには港湾荷役作業を行う作業場などが多数存在し
そこからはまるで海の男達の息づかいが聞こえてくるかのよう。
そんな港の働き者を支え続けてきた食堂はそんなエリアのまっただなかにあったのだった。


「安全入船食堂」
福岡県北九州市門司区東港町5

コンテナを加工して作ったようなその建物には一応ガラス戸が入れられていたのだが
水滴がついていて外からでは全く中の様子を窺い知ることはできない。
この手の店と言うのは入っていくのに結構勇気がいるものだが…
実際に中に入ってみるとそこは地元の人ばかりが集まる場所であったものの
なぜか溶け込みやすいような不思議な空気を持った空間が広がっていた。


朝定食300円。

この日はごはん+みそ汁にとろろ、ベーコンエッグ、漬物
そして九州特有の甘い醤油を使って煮込んだ煮物がついていた。

やってきた常連客とおぼしき人の中には「朝まで飲み明かしていた」と言っていた人もいたが
そんな人の胃にもやさしいメニュー。
食べ終わったあとは、厨房の入り口の手前にある棚に自分で食べ終わった食器を返しに行くのが
この店のローカルルールであるようだ。

地域の人の生活の息づかいを感じる食堂で地域の人が普通に食べている朝ごはんを食べて一日のスタートを切る朝。

わずか300円で、味だけでなく五感で門司という土地の空気を感じられるこの食堂は
もしかするとどこの観光地にも勝る最高の観光スポットなのかもしれない。

= 参考リンク =
・門司港レトロ倶楽部
・北九州市発行「雲の上」第5号
・ザ大衆つまみ食い「愚直に」