2008年5月24日
粋な競輪(弥彦F2最終日)
マコトー!の声が響き渡る松戸競輪場から戻ると時刻は午前零時。
寝ぼけながらサイト更新などをしていたところ新潟在住の競輪仲間から
私が弥彦競輪に行き出すきっかけとなった人と言っても過言ではない人がやめてしまったかもしれないといういやな連絡が届く。
この日の弥彦開催は最終日。
それならば様子見がてらに行って来てみるかと思い立ち、そのまま一睡もしないまま家を飛び出し
上越国境に向けて車を走らせて行くことにした。
しかし月夜野インターから関越自動車道に乗り関越トンネルに入る頃になると眠さはピークに達してしまう。
なんとかトンネルを抜けて土樽のパーキングに車を入れて仮眠をとると、気がついた頃には午前8時半を過ぎていた。
目が覚めたあとは目覚ましがてらに湯沢インターを出たところにある湯沢温泉の公衆浴場・山の湯で一息。
この日は土曜日だったがスキーシーズン外であるこの時期の湯沢はとても静かなもの。
もの静かな番台のおじさんに400円の入湯券を「おはようございます」と言いながら渡して浴場に行くと
風呂には誰もおらず貸し切り状態。
無色透明で若干のとろみのある源泉掛け流しの温泉に身を沈めて身も心も安らかになる時間を過ごした。
しばらくすると地元の人とおぼしきおじさんが「おはようございます」という大きな声とともに入ってきた。
街にある温泉センター的な場所では見知らぬ誰かと顔を合わせたとしてもめったに挨拶をすることもないが
こうした温泉地の公衆浴場には、まだまだ昔の銭湯の風情にも似たものが残っているからすばらしい。
温泉から脱衣所に出るとあたかもクーラーがかかっているのかと思えるほどのさわやかな風が流れていた。
もちろんそこにはクーラーなど何もあるはずはなく、ただ窓が少し開いているだけ。
やはり高原の空気と風というものは体にやさしく気持ちいいものだ。
ここではゆっくりしすぎてしまったので湯沢からはまたしばらく高速道路を使って三条燕インターまで進む。
道中では間もなく開店時間を迎えるいわゆるツバサン系ラーメン店の名門・杭州飯店に少々後ろ髪をひかれたが
1レース開始まであまり時間がないこともあったのでそのまま進んで弥彦競輪場へ。
駐車場に車を停めていわゆる神社側入口から競輪場に入っていくと
手前の道路の横断歩道のところにいる警備の人がいつもに増して大きな声で「おはようございます」と言って迎えてくれた。
競輪場に入ってすぐに、同じ群馬県人なのになぜか地元以外で会うことが多い競輪ファンのおばさまと出会ったが
なぜか栃木支部贔屓のおばさまが私の顔を見るなり開口一番言った
「初日に押久保さんが落車して頭を打って意識不明のまま救急車で運ばれちゃったんだってよ。心配ね。」
という言葉に思わず凍り付く。
押久保徹選手(栃木・59期)と言えば時には自力も繰り出す穴党の私にとってはスター的な存在の選手。
弥彦競輪の専門紙・新潟スポーツの記事によれば左肋骨の骨折とのことだったが
立ち遅れて懸命に追い上げている最中に前で落車した選手を避けた選手に引っかかって
地面に叩き付けられるように落車した様にはかなり危険なものを感じた。
弥彦あたりの賞金では最終日の8レースになっても1着賞金が10万円にも満たないという
トップ級の選手とは比べ物にならないほどの安い賞金を賭けて文字通り命を賭けて戦っている選手達。
この日の8レースでは押久保選手のことが影響したのかどうかは分からないが
普段逃げることなどまずない若林耕司(群馬・87期)が逃げて
番手で選手会栃木支部支部長・雁部護選手が仕事をするという見せ場があったばかりでなく
チャレンジ一般の「昔は強かった人シリーズ」など見所も満載で
併売されている大垣記念がどうでもよくなるほどに一日存分に楽しめた気がした。
競輪がどんどんケイリン化して行き
今ではすっかりラインも何もないただの自転車競技会となり下がってしまっているG開催と比べれば
個人的にF2開催は一番面白いと思っている。
もっとも競輪に対しての技術も知識も未熟な若手選手がメインとなっている都合上
ただのケイリン競走になってしまいがちなチャレンジ決勝などは見るのも車券的にもあまり面白くない気がするが…
番手競りを宣言したにも関わらずどちらかの選手が死ぬまではやらず
単なる併走からの踏み合いに負けた選手がだましだまし1車引いて3番手にはまり
競った者同士で車券に絡んでしまうようなヌルい競りとは言えない競走がまかり通っている現状のなか
最後まで必死に番手を巡って戦った川辺勇太(北海道・89期)と吉野直樹(千葉・55期)の競り合いなどからは
「これぞ競輪」というマーカーとしての意地と意地がぶつかり合う気合いというものが感じられ
車券は当たらなかったものの非常に良いレースだったと思った。
やはり競輪の核はF2開催。
客にとってはグランプリやG1の決勝であろうとF2開催の1レースであろうと同じ1レース。
どうせ同じ金を賭けるならば必死に戦っているほうを応援したくなるのが人情。
温泉場でたまたま顔を合わせた見知らぬ人と交わす挨拶のように、昔からの「粋」が根付くF2開催に
いつまでも私の主戦場を置いてやって、これからも真の競輪というものを味わい続けて行きたいと考えている。