2008年6月 1日

あなたと私は金網越しの長い長いお付き合い(高松宮記念杯競輪2日目より)

大津びわこ競輪場で行われた高松宮記念杯競輪の2日目1レース。
選手紹介の時点から木村貴宏(茨城・80期)にスタンドから周回ごとに声が掛かる。

「木村!謝罪せぇ!」
「チャレンジレースでも走っとけ、ボケ!」

結局そのレースの木村は全く見所なく敗れ、しまいには車体故障事故入のおまけつき。
ゴール後、木村はわざわざ中バンクに上がって来てスタンドにいるその声の主のほうを振り返り
田舎のヤンキーのように威嚇して引き上げて行った。

最近、汚いレースをすると各地で野次られ続けているのを見掛ける木村。
内心、余程たまりかねたものがあったのかもしれないが、悪いことは悪いと素直に認めることもできず反発しているようでは
残念ながらそれまでの人間だと思われてしまっても仕方がないのではないのだろうか?

木村は一流になるための素質は十分に備えているはずの選手だと思っていたし、これには本当にがっかりした。
これでは去年の暮れの平塚で全く見所がないレースをしたにも関わらず野次を飛ばし続けた客のほうにわざわざ歩み寄って行き
ケンカを売った山田敦也の行為と大して変わらないではないか。

ヤジられて悔しいのであれば、選手はとにかく練習して競走に勝ってヤジる客を見返してやるしかない。
それが選手ができる最大の客への嫌がらせだし
それができるだけの実力が伴えば、例え結果が伴わなくたって客は認めてくれるはずである。

折りしもこの日、東京競馬場で行われた日本ダービーを勝った四位洋文騎手は
勝利者インタビューの時にそれ遮るように繰り返し高声を発した観客に対して「うるせぇよ」と一喝したそうだが
それは勝利者であるから、まだ格好がついただけのこと。
負けてそれをやってしまったのでは、それはただの負け犬の遠吠えでしかなくみっともないだけである。

競輪競走においては八百長行為などを防止する意味でも選手は競走中に話してはいけないことになっているが
各地のF2開催などを見ていると落車するなどしてレースを壊してしまった選手が観客に対して深々と頭を下げるシーンや
勝って声援を送られた選手がバンクの上まで上がってきて
観客に対して「ありがとうございます」と言うシーンなどは稀に見るようになってきているし
以前から敢闘門に引き上げる時には必ずグラウンド(バンク)とお客さんに向かって深々と礼をして行く選手も多数存在する。

どうしてヘタをするとサラリーマン程度の収入しか得られないF2に出ている選手ができることを
G1という最高の賞金を得ることが出来る開催に出場している選手ができないのだろうか?
私にしてみれば本当に不思議で仕方がない。

確かに客の中には「選手は客に絡みに行ってはいけない」というきまりに守られているのをいいことに
自分のことは棚に上げて選手の悪口ばかりを吠え続けている心の貧しい者もいる。
しかし最高峰のG1レースに出場するような選手がわざわざそんなものをまともに相手にして何の得があるというのだろうか?

選手は無事に回ってくることができれば、着に関係なくもれなくお金を貰うことができる。
しかし客は自分が買った車券とほんのわずかでも結果が狂えば一銭ももらえないばかりか
下手をすれば明日という日が来なくなってしまう場合だってある。
その決定的な違いもあって残念ながら選手と客というのはお互いが分かり合えないことが多いばかりか
お互いを仇敵関係ぐらいに思っている者も決して少なくない。
しかし客の側だってなんだかんだと言ってはみても、結局のところみんな競輪が大好きだし、誰しもが選手を愛しているのである。

「テメーなんか選手辞めちまえ!バカヤロー!」
それは客からの最大の賛辞。

全く期待も何もされていない選手が惨敗しようと全く声などかかるはずはないし、罵声が飛ぶのは期待されている証拠。
少年が好きな女の子に素直に好きと言えず、思わず意地悪をしてしまうのと同じように
観客からの罵声は「選手の皆さん愛してます。がんばってください。」というメッセージが込められたラブコールそのものなのだ。