2008年10月31日

愛情と愛憎が渦巻く3分間のドラマ


この日から開幕した松戸競輪ファンタジーナイトレース・マッピーオータムカップはF2開催。

F2開催と言えば基本的に売り上げも少なく
車券を売る胴元の側も余計なコストをかけたくないがために何も手を打つことをしないため
知らず知らずのうちに「走る選手の顔も名前もわからないし、わざわざ見に行って車券を買うまでもないレース」という印象を
勝手に刷り込まれてしまっていることの多いかわいそうな開催。

しかしその反面で、以前は逃げ屋不在のレースでしか見ることができなかったようなカマシ主体の軟弱な競走が主流となり
今ではすっかり競輪という競技本来が持つ魅力を失ってしまったグレードレースなどよりも
個性溢れる選手達が安い賞金を賭けて文字通り命を削って戦うという競輪本来の魅力が味わえる開催として
本格的な競輪ファンには根強い人気を持ち続ける知る人ぞ知る楽しい楽しい開催でもある。

客のファンキーさでは全国随一の松戸競輪場でも
ここのところは競輪の衰退とともに以前の活気が嘘のように静まり返ってしまっていることも少なくなかったのだが
この日松戸競輪場に集っていたのはいつもに増してディープな面々だったようで
「バカヤロー!」「コジキヤロー!」「やめちまえ!」
レースで不甲斐ない競走をした選手には容赦ない罵声が浴びせられたほか
スタンドからは「伊勢崎もっと踏めよ!」など先頭誘導員への声援(?)や「對馬!髪切れバカヤロウ!」などという謎の声援など
ここ数年のうちに競輪が一気に衰退する以前は毎回当り前のように見ることができたくらいの
ある意味非常に競輪場らしいと言える活気ある光景を久しぶりに見ることができてなかなか楽しかった。

先日、川崎競輪場で聞いた話では若手のホープにつけたA3のベテラン選手に対して
地乗りから「付いて行けよー」「千切れんなよー」などと散々叱咤激励が飛ぶ中で行われたレースで
ベテラン選手はやや踏み遅れながらも断然人気を背負った若手選手にキッチリと付いて行って着をキープ。
ゴール後はそのまま金網越しまで上がってきた上でスタンドに向かって大声で
「ついていったぞー!」と絶叫してそれを聞いた周囲の客は大いに盛り上がったのだとか。

公正なレースを行うためにバンクを走る選手は基本的にレース中の私語等は禁止されているそうだが
これはゴールした後でのことであるし公正さの面では全く問題はないはず。
こうして選手と金網の向こうにいる客とが温度差なく一緒に盛り上がることができれば
競輪は最高に楽しいエンターテイメントとなり得るのである。

「人気の選手にしっかり付いて行けるかどうか?」
これは車券を買った側の人間だけでなく、実際にバンク上で走る選手としても非常に緊張する瞬間でもあるはず。

客席から飛んで来る「バカ!」「アホ!」「マヌケ!」の声はすべてが選手への愛情の裏返し。
バンクを走る選手もスタンドで車券を握り締めて叫ぶ客も
競輪という3分間のドラマを彩るには欠かせない主役の一人なのである。