2008年11月 2日
西の未踏の競輪場を巡る旅
ふるさとダービーも今回の広島での開催がいよいよ最後の開催。
競輪を始めた当初は「ふるさとダービー」なんて
なんとセンスのない恥ずかしいネーミングなんだろう」と思ったものだが
いざそれがなくなるとなると最後ぐらいは行ってみようかという気持ちになるから不思議なものだ。
ましてや今回の開催場は数ヶ月前に初めて訪れてすぐに雰囲気が気に入ってしまい
すっかりお気に入りの競輪場となってしまった広島競輪場。
しかもそのふるさとダービーが終わった後は周辺にある私がまだ未踏の競輪場での開催が
タイミングよく行われるとあっては尚更行かぬ手はない。
夜な夜な車に乗り込んで夜の国道をひたすら西へ。
高速道路もほとんど使うことのない貧乏暇あり人間によるスローペースな各駅停車競輪旅行はそうしてスタートして行った。

翌朝には琵琶湖のほとりに到達。
ここからは若狭湾の方面に抜けて九州に向けて走っている長距離トラックなどがこぞって利用する渋滞の少ないルートを辿って行く。

(重要伝統的建造物群保存地区・鯖街道 熊川宿)


途中で立ち寄った熊川宿には前川という用水路が流れていて
各戸にはその用水路を利用するための「かわと」と呼ばれるスペースがそれぞれ用意されていた。
水の流れが地元の人々の生活の中に溶け込んだ町。
ここは特別観光地然としている訳でもないがきれいに整備された実にいい雰囲気の場所であった。

やがて車は早い時期からオバマ氏の応援に立ち上がったことで知られる小浜市(おばまし)を抜けて
綾部・京丹波と経由して最初の目的地へ。
この日はここの道路を使って高校の駅伝大会が行われていたために
篠山方面に向かう道はしばしの間通行止めとなり思わぬ足止めを食ってしまったが
競輪ファンとしては忘れたくもない忌まわしい記憶。
約一年前の2007年10月31日のお昼にこの場所で街道練習中に非業の死を遂げた脇田眞一さん(兵庫・49期)の事故現場に到着した。

ここは大型トラック同士が離合するに十分な道幅はあるものの自転車等が退避するスペースが全くないほか
トンネル内も決して明るくないために運転手が前を走る自転車の姿をなかなか見つけにくいという危険なトンネル。
写真にあるように京丹波側には2枚、篠山側には1枚「トンネル内 自転車注意」の看板が掲げられているがここは山間の快走路。
ほとんどの車が法定速度以上のスピードで走っているし
ドライバーが前方の自転車を発見するのが一瞬でも遅れればたちまち大きな事故が起きてしまう危険性は十二分にある道路である。
大型トラックは近年最高速度が速度リミッター(Max90km/h以下)で抑制されるようになっただけでなく
事故抑止・燃費向上の目的で多くの運送会社がデジタルタコグラフというものを導入して法定速度や交通の流れに関係なく
あらかじめ定められた社内制限速度・社内制限エンジン回転数というものを遵守して走らなければ
減給や悪くすれば解雇もありうるという厳しい状況での運行がなされている。
これまでであれば交通の流れに乗って普通に80km/hで走っていた道路も
わざとその流れを遮るようにして50から60km/hのゆっくりした速度で走らなければならない一方で
設定された荷物の降ろし場所への時間は変わらないという状況。
荷主や運送会社は「スピードを厳守した上で時間に間に合うようにお願いします」と言ってごまかすのが常套手段だが
荷主の都合などで出遅れた際はどうやって対応するかと言えば休憩時間を削るかなくして対応する以外方法はないし
そうしたとしても間に合わないなんてケースも決して少なくないのが現状。
当然運転手も焦ってくるだろうし、もしもそんな時に対向車がビュンビュン走って来る道を自転車が走っていたとしたら…。
このような場所で自転車と出くわした場合は
対向車が途切れて追越が安全に完了できる場所に出るまで自転車の後ろをタラタラと走って待つより方法はないのだが
もしも見通しが不十分な場所で社内制限速度・回転数を守らねばならず十分な加速もできない大型トラックが見切り発車して追い越しをかけた時に
対向車線から80km/h以上のスピードで乗用車が向かって来たら…?
わずかな長さの自転車を追い越すにしても12mの長さを持つ大型トラックが追い越しを完了するまではそれなりの時間がかかるし
猛スピードで迫ってくる対向車の接近に驚いて追越が完了しないうちに車線に戻ってしまったりした時には
確実に交通弱者である自転車には「死」というものが降りかかって来てしまうことになる。

通りの激しいバイパス路を回りのスピードに合ったスピードを出すことができない原動機付自転車で走ったことのある方であれば
身にしみてよく分っていただけることだろうが、一般公道においては周りの交通の流れに乗れないことほど危険なものはない。
道路交通法では交通の流れに乗った安全で円滑な運転というものが前提として掲げられているように
車やバイクなどを運転する上で一番重要なのは周りの流れに乗った運転をすること。
なので回りとスピードを合わせることができるはずもない歩行者・自転車・原付車などを
自動車と同じ車線で走らせようとするこのトンネルの構造自体がどう考えても危険なことは間違いないのだが
3ケタ国道で人里離れた山の奥であるこのあたりに改良のための予算が回ってくる可能性は残念ながら低いのかもしれない。
この街道は見通しも良くアップダウンも豊富であることから自転車や長距離走のトレーニングに最適な場所であるようで
通るたびにロード車に乗ったチームやらランニングを行っている人の姿をよく見掛けるが
こちらのブログによるとこのトンネルでの危険回避法はネットでも話題になるほどであったというし
同じ兵庫所属の競輪選手である向吉信之選手(65期)も自身のブログにおいてこの事故を「道路構造の犠牲に・・・」と述懐。
ここが危険な場所であることは誰の目から見ても明らかなことであるようだ。
事故は被害者も加害者もすべての人を不幸にさせるもの。
トンネルの片隅に手向けられた花のところに行き
「残り少ない現役生活ですがコツコツ練習してキチンと調整してレースに挑みますので応援宜しくお願いします!」
keirin.jpのプロフィールにこんなコメントを残しそのコメント通りにコツコツと練習を積んで活躍を続けていた脇田選手を偲んで手を合わせたあとで
その場所から改めてトンネル内を見渡すと、このような痛ましい事故が起こったにも関わらず
未だに何の対策も講じられていない状況になんとも言えない気持ちになった。