2008年11月12日

たとえあなたが消えたとしてもあなたの頑張りで後ろの選手が勝てたとすれば客も満足するものさ

冷たい雨と風が吹く中行われた松戸F2ラストファンタジーナイトレース初日7レースは
物部国治(東京・76期)、高橋謙太郎(岩手・84期)、四柳慶一(静岡・64期)による3分戦。

このレースはメンバー的に物部が先行、中団に四柳、後方に高橋という絵が浮かんできそうな番組だったが
車券のほうは並外れたスピードがある高橋謙太郎の力に期待したからなのか
はたまた後ろに先輩がズラリと並んでラインが長くなったからこいつは必ず行くはずという旧来の競輪の常識に買い手がとらわれたからなのか
一番人気は高橋の番手を回る菊地芳彦(福島・55期)の差し目からだった。

レースは後ろの仕掛けがないのをいいことに物部がグッとペースを落として先行すると
緩んだところを後方に置かれた高橋謙太郎が打鐘で一気に叩こうとするが、それに併せて物部も発進。
物部が隊列を引くと高橋は鐘3角手前で早くもそこでの仕掛けを諦めて中団から後方に下げてしまい
今度はBSから捲り上げての再度のチャレンジ。
しかし完全にマイペースで駆けた物部の末脚は強靭で高橋は中団近くまで捲り上げるのがやっとで
最後は番手から松石が抜け出して埼京の1・2・3が成立。
結局、高橋に乗った菊地は4着まで。
実に中途半端な仕掛けから最後は申し訳程度に再度捲り上げた高橋だったが
結局は物部のペース駆けをまんまと許してしまう結果となり全く見せ場なく敗れてしまった。

力を温存するという訳でもないのだろうが、こんな寒い日は走っている側の選手も
無理をするとケガをしたりしていいことがなかったりするせいかこんなレースもあったりするものだが
車券を買った者からすれば、高橋が仕掛けて叩けずと見てもすぐに後方に下げることなく
そのまま行ける所まで必死に行ってくれたとするならば車券が外れてもまだ納得できるというもの。

続くレースでもうまく前々から中団をキープした力上位の秋葉大輔(東京・90期)が
先行した高谷穣(青森・90期)を離れ気味に追走した岡田富夫(宮城・39期)をわざわざ入れてしまったために
結果、すんなりと高谷のペース駆けを許してしまい最後はなんとか自分だけ届いたものの
2着には人気薄の逃げた高谷が残ってしまうという意外な結末となってしまったのだった。

この結果は3連単を薄く広く流している人にとってはありがたい結果となった訳だが
競走的には実に甘さが残る競走で個人的には見ていて満足の行く競走とはとても言えるものではなかったようにも思えた。

車券の買い方のスタイルは人それぞれであるために
すべての人が満足する競走を実現するというのは実際のところ不可能に近いことなのだが
最近の競輪競走にありがちな自力選手が後ろに差されないことを意識するせいなのか
行けるタイミングで行かず結果的に自分すら届かずに終わってしまうことも多いほどのあまりに小さい競走は
誰が見ていても決していい気持ちがするものではないように思える。

「たとえ自分がダメになっても行けるところまで行っておけばあとは後ろの人がなんとかしてくれる」
自力屋はそんなことを基本にして「後ろに付けてくれた人にも勝負権のある走りをする」のが競輪のライン戦本来の姿。

本来自力型選手がすべて後ろのために力を使い果たす走りをするならば
自力型-自力型という決着はめったに見られないのが普通だと思うのだが、残念なことに今となってはそれがあたりまえのこととなってしまった。
もちろん自力屋がそんな仕掛けをしていたのでは競輪が持つ魅力のひとつであるマーク屋による横の動きの出番など当然あるはずもなく
マーク屋も自分で着を拾うためには切り替えたりインを突いたり動いてくれた先行屋を弾き飛ばしてまでも
前へ前へと突っ込みたくなってしまうのは実に自然な流れであり
まさに悪循環としか言いようがない競輪をよりつまらないものにしている要因となってしまっている。

単純にタイムを競う自転車競技とは違い
競輪とはタイムを出すだけではなく勝つためにあらゆる苦難に打ち勝つタフさも必要な競技。
それと同時に人としての義理人情をも感じさせる実に人間的で情熱的な競技であるからこそ長く多くのファンに愛され続けてきたはずだし
競輪ほど人間の気持ちというものが前面に出て、これほどに心躍らされる競技は他にはないと思うからこそ
ファンは他の競技や楽しいことには目もくれず夢中になって競輪をやり続けているのではないか?

仕掛けず9着。タイミングを逸して9着。仕掛けられず9着。前が壁になって9着。展開のアヤで9着。
「どうせ9着になるのであればイチかバチか行ってみろ!」
それが車券を買った人間の共通の願い。
ましてや展開次第の33バンク。巻き返しの効かない松戸バンクで
一番人気の選手が最終バックで7・8番手にいることほど車券を買った者として悲しいことはない。

たとえあなたが消えたとしても、あなたの頑張りで後ろの選手が勝てたとすれば
それはそれで競輪としてはひとつの立派なハッピーエンド。

「よーしよくやった!…でも次は頼むからもっと買いやすい決着で決めてくれよ!」
そんな声が客席から聞こえる競輪場は客席の雰囲気も決して暗いものにはならないはずなのだから。