2008年11月14日

心にも秋風が吹く風のワンダーランド(宇都宮競輪F2より)

この日はF2戦の行われている宇都宮競輪場へ。

建て替え工事が進められているメインスタンドもだいぶ出来上がってきた感じの場内は
涼しい風が吹き抜けてもうすっかり秋の雰囲気。
F2戦とあってか閑散とした場内には少々物悲しい雰囲気すらたちこめていた感じだった。

この開催の目玉はなんと言ってもデビュー以来3連対率100%の記録を更新中の岩本俊介(千葉・94期)。
この日の岩本は川上和正(福島・92期)-竹内優也(北海道・89期)-小田桐義継(北海道・81期)と並んだ
並びの上では2段駆け・3段駆けも十分に可能な布陣の北勢と対戦するというなかなか厳しそうな番組に割り当てられていた。

このレースは2分戦ということもあって北勢に真っ向から力勝負を挑む可能性も十分でありなかなか楽しみなレースとなったのだが
岩本は余程自分のダッシュ力に自信があるのか後ろ攻めからレースを組み立てたにも関わらず
いつものように前で受ける別線を抑えようともせず後方からカマシのタイミングを計る組み立て。
そうなれば前受けの川上は岩本が来ないと見るやすんなりと突っ張るようにして先行態勢に入り
上昇しかけていた岩本はたちまち一旦後ろに引かざるを得なくなってしまうという危機的状況に。

しかしそこで先行した川上が後ろを引っ張る「死ぬ先行」をしようものなら岩本としてもかなり苦しい流れになっただろうが
川上の先行があくまで自分も残ろうとする色気たっぷりの先行であったことにも助けられ
最終ホームでタイミングを計ってカマシ気味に発進した岩本はそのままスピードの違いで川上を叩いて一気に主導権。
岩本のカマシに離れ気味に追走していた神田幸洋(静岡・67期)は川上の番手から出た竹内-小田桐に捌かれてしまい
レースは単騎で駆ける岩本とそれを必死に追い掛ける竹内-小田桐の完全に3人だけの争いとなった。

最終的にはかなり岩本を追い詰めた竹内だったがなんとか1車身半迫るのがやっと。
竹内の後ろを回った力上位の小田桐はこの流れであれば当然抜け出してくるだろうと見られていたが
4角で早めに踏むと意外と伸びないと言われる宇都宮バンクの特性にはまったのか
最終的に伸びを欠いて流れ込み3着までという少々意外な結末に。

このレースは定石であればせっかく別線が前を取ってくれたのだから
しっかりと前を抑えて先行するのが一番確実な方法であると私には思えてしまうのだが
岩本はいつものように前を抑えずのカマシ発進狙い。
仮に別線が色気を出さずに死ぬ先行で後ろを引いたとしたならばかなりの苦戦が予想され
もしかするとこんなには簡単に勝てないレースとなってしまっていたかもしれない。

「競輪とはラインの全員が力を合わせて戦う団体競技」
結果的に最後は圧勝とも言える内容であったにも関わらず場内から岩本を賞賛する声がほとんど飛ぶことがなかったのは
競輪競走を長年見続けて目の肥えたファンがこのレースを決していいレースだとは認めなかったという証拠でもあるはず。

圧倒的に力が足りないにも関わらず色気を出した先行をして結局9着に沈んだ川上和正に
浮き駒も含めて後ろに多くの選手を従えて駆けるチャンスであったにも関わらず徹底して自分の競走に徹して見せた岩本俊介。
「どう走っても9着になるのだったらいっぺん死ぬ気で駆けてみろ!」と客がわめいてみたところでそんな気持ちは選手には届くはずもないし
終わってみれば結局は「なんだこりゃ」という結末。

「この若いのが逃げるだろ」
場内でそんなことをつぶやいているじいさまを見かけると思わずかわいそうになってしまう今日この頃。
心が躍るような競走は残念ながらここでも見ることはできなかった。