2009年2月 2日
展開待ちだけでは勝つことができないバンクの競輪はとってもおもしろい(前橋F2より)
今回の前橋F2上毛新聞社賞の開幕と同時に前橋競輪場の正面入り口付近には
過日亡くなった手島慶介選手の献花台が設置され、そこでは記帳の受付や生前に使用していた競輪グッズの展示
さらには手島が制したビッグレース競輪祭新人王、ふるさとダービー防府・弥彦、SSカップみのりのレースVTRがエンドレスで流され
多くの競輪客がそこに集まり生前の手島を偲んでいた。
土曜日と豊橋記念の全レース併売が重なった初日は雨の中、割と多くの客が競輪場に集まっていて
「手島が競輪客を前橋競輪場に集めてくれたのか」と思いながら満車になった駐車場を眺めていたのだが
翌日の新聞で入場者数を確認してみてビックリ。
いつもより人が多いなと思っていた初日はなんとたったの2708人しか入場者がなかったとのこと。
競輪場に客が集まろうが売り上げが高かろうが低かろうがただの客である私には何の関係もないことだが
これにはさすがにガックリ。
競輪の客離れが加速度的に進んでいるのか、本場離れが進んでいるのかは分からないが
入場料無料、ドームで雨風凌げてオールシーズン冷暖房完備の快適な競輪場であるはずの前橋競輪場でさえも
確実に訪れる人が少なくなっていることは間違いないようだ。
今回の開催はA級チャレンジには阿部大樹(埼玉・94期)
A級1・2班戦のほうには「カールルイスと走った男」小島雅章(埼玉・83期)や伸び盛りの佐藤幸治(秋田・92期)など軸になる選手が活躍。
中でも強いのは分かってはいるものの1着かヤラズかでムラのあるイメージの小島雅章や佐々木弘美(秋田・69期)が
積極的な競走を見せて結果を残したほか
以前は一介の捲り屋というイメージしかなかった内田英介(静岡・91期)もイン粘りや早目の仕掛けなど
前橋バンクに合った後手を踏まない競走で大いに見せ場を作り
「もう自力では通用しない」とマーク屋に転身した小林孝文(福島・89期)も番手でなかなかいい仕事をするなど新境地を開拓して見せた。
中日の日曜日にはレースの合間に手島慶介の追悼セレモニーが行われたそうだが
競輪場の客がすべて手島のファンとは限らないとして、セレモニーはかなり質素なものになってしまったそう。
最終日に競輪場に行ってみたら手島の献花台の前には
初日には用意されていなかった献花用の生花が置かれていて、多くの人が花を手向けて遺影に手を合わせていたし
多くの競輪客にとっても手島の死は「賭博の駒がいなくなった」以上のものがあることが伺えた。
最終日、ここまで8連勝で勝ち上がりここに特別昇班を賭けた阿部大樹は
「先行選手の大先輩・三浦世二さんに言われたけど特別昇班を意識して勝ちにこだわる走りをやると失敗する。
内容重視で見せるレース。そのほうが優勝できそう」(アオケイより)というコメントを出し圧倒的な人気を集めたが
現状では明らかに力が劣る元プロ野球選手でもある北野良栄(千葉・95期)に先手を取られるなどして
最終ホームに入った時点ですでに終わっているような大凡走を展開。
レース後、後ろにつけた先行の神様に蹴りでも食らったかどうかは知らないが
2着に残った芦沢辰弘(茨城・95期)の上がりが11秒1。終速が49km/h台というバタバタなレースでも
キッチリ追い込んで勝った本田拓也(新潟・92期)や3着に食い込んで見せた山本光一(栃木・69期)あたりはさすがと言えるだろう。
続く10レースでは断然の人気を集めた小林圭介(茨城・83期)が4.00のギアを利して捲るも
前橋での典型的な捲り不発のタイミングでの仕掛けとなってしまいスピードに乗り切れず
前橋のドームマジックが牙を剥いて見事に不発という結果に。
続く11レースでも断然の人気を集めた吉松賢二(群馬・90期)がなんと浮き駒の飯田威文(埼玉・67期)に先手を奪われ
そのまま逃げ切られてしまうという大凡走。
これにはさすがにスタンドの客も
「テメーは赤い帽子を被ったんならそのまま郵便配達でもしてやがれ!郵便配達に転職しろ!」
「お前はそれでも自力屋か!恥を知れ恥を!」
と3番車で赤いヘルメットカバーを被った吉松に対して罵声の嵐。
その罵声の声の大きさは地元選手による手島の弔い合戦を意識した闘魂の走りに期待していたファンの落胆ぶりを
如実に表しているものと言えるだろうが、当の吉松には果たしてその真意が届いたのかどうか?
決勝は須永優太(福島・94期)をウマに使える佐藤幸治-小林孝文-阿部宏之と続く東北ラインが断然有利な競走。
ここは以前松戸競輪場に行った時に「鈴木ー鈴木ー」と旧姓で呼び続ける熱心なファンもいたほどの内田英介が
何かをしてくれるだろうと内田の番手につけたマイドリームレーサー石川一浩(静岡・57期)の頭固定流し車券で勝負をかけた私だったが
ゴール前、寸でのところで届かず終了。
ガックリうなだれながら競輪場を後にすることとなってしまった。
私が競輪を始めた頃に一番違和感を感じたのが競走後の全着順の確定放送。
これは何かと同じだなとよくよく考えてみたら
陸上競技などの記録会のリザルトの放送と同じであることに気がついた。
「金を賭けている側は必要以上に気合いを入れて見てしまうけど、競輪なんてものは選手にしてみたら所詮記録会みたいなものなんだろうな」
最近林立する選手ブログなどを見ると驚いたことに「競輪の競走」のことを「試合」と言う人までいるくらい
選手にとって見れば戦いの場でもなんでもないただの試合、記録会に成り下がってしまった現在の競輪は
さすがに以前ほど見ていて熱狂することもないし一日の開催は本当に淡々と消化されるように
熱さというものがほとんど感じられないものになってしまったが
まだまだ随所に見られる「選手の気持ちが前面に出た競走」というのは本当に見ていて楽しいものだ。
いつも後方に下がってしまうイメージの小島雅章が果敢に早めの仕掛け。
逃げたら強い佐々木弘美が別線を前に出させない果敢な仕掛け。
まさかの逃げを打って逃げ切り勝ち。してやったりの飯田威文。
「カッコ良く勝ちたい」なんて欲のある人気選手を一瞬にして奈落の底に叩き込み
なんとしても勝ちたいという気持ちを前面に出して果敢な仕掛けをする選手にまさかの一勝をプレゼントする
それが前橋ドームの持つマジックたる一面。
客は少なくなってもやっぱりこの競輪場の
手島慶介のようになんとしても勝ちたいという気持ちを前面に出した選手が勝てるバンクの競輪というものは
とても楽しいものだとつくづく実感した今回の開催であった。